後ろ髪伸ばしてヘンなヤツ

そんな具合であったから、私が神様に近寄ろうとでもするなら、火責め水責めで殺されるとまではいわないが、さんざんに懲らしめられてしまうのではないだろうかと、恐ろしくなってしまうのである。そんな罪深い私がクリスチャンになれるわけがない、と思ったのは当然だろう。正直、怖くて怖くて、神様に近づこうなどとは想像すらできなかったのである。

どうしたものかと考えていたある日のこと、留学生を対象にしたクリスチャンのキャンプというのがあるが、一度参加してみてはどうかとキムさんに声を掛けられた。思えばいろいろなことに誘ってくれるものである。そして、私も調子よく誘いにのるものだ。もちろんひとりだけでは参加したくなかった。社交的とは程遠い私であったから、誰も知っている人がいないところに放り出されるのはどうにも苦手なのである。いや、知っている人がいないだけで、他に誰もいなければそれはそれで気楽でいいのだが、知っている人がいないけど、今回のキャンプのようにみんなで食事をしたり、寝泊りしたり、聖書を勉強したり、というのはなかなか耐え難いことのように感じてしまったのである。しかし、キムさんの話では、デイブさんやメラニーさんも行くということなので「これは救われた」と思い参加することにしたのである。結局、キャンプにはカネシロさんの車に同乗させてもらい、一緒に行くことになったのである。

さて、私たちがキャンプ場についた頃にはすでに参加者の何名かが到着していた様子で、いろいろと準備をしている人たちの姿を目にした。このようなイベントに参加するのは初めてなので、どうしてよいのか分からずにキャンプ場の中の様子でも探ってみようかと思いつつ、辺りをうろうろしていると、ギターやらの楽器の練習をしているグループの姿が目に入ったのである。

去年の暮れから聖書の勉強会に参加するようになり、また不思議なきっかけからマッスルマンさんの家にホームステイをするようになったので日曜には一緒に教会にも通うようになった私には、クリスチャンたちが歌う歌というのは「賛美」と呼ばれるものであるということと、ピアノやオルガンの伴奏で歌う賛美歌とか聖歌とか呼ばれている伝統的というか古典的というか、なかなか重い響きの歌もあれば、ギターで伴奏される軽やかで今風の歌もあるという具合で、その種類は様々であることも知るようになったのである。この頃には私も何曲か覚えて、音痴で聞き苦しいかもしれないが歌えるようになったのである。どうやら、会場の一角で練習しているのは、このキャンプで賛美の伴奏をし賛美を導くグループであるらしいということが分かった。

そのグループの中でことさら私の目に留まったのが、日本人らしい一人の留学生の姿であった。何で私の目に留まったのだろうか。それはきっと彼が後ろ髪を長く伸ばしていたからであろう。何を隠そう、実は私もその頃には髪を長くしてポニーテールにしていたのである。同じ日本人、同じように長髪、そう考えると少しは親しみでも感じても良いものだろうが、ところが私は反対に「なんだアイツ、後ろ髪伸ばしてヘンなヤツ」と思ったのである。

その頃、私は英語を完璧なものなするためにも、日本人とはなるべく付き合うことのないように、日本人と話す時もできる限り英語で話すようにと心掛けていたのである。思えば同じ学校に通う日本人からは「付き合いの悪いヘンなヤツ」と思われていたかもしれないが、そんなことはどうでも良かった。そもそも私は遊ぶためにアメリカに来たわけではない。さて、そんな理由もあったので、そこでギターを抱えて賛美の練習をしていた「ヘンなヤツ」ともなるべく関わらないようにしよう、と私は思ったのである。きっと会話することもなく親しくなることもなくキャンプは終わるに違いないと考えていたのである。

日が暮れて参加者がほぼ集まった頃になると、スタッフやボランティアのアメリカ人も含めて百人近い人々がこのキャンプの主な会場となる建物に一度集まった。さて、全員集まると、聖書のことでこれほどの人が集まるとは、なんとも日常とかけ離れていることを目にしているようで驚きと不思議さを覚えた。

(続く)