天国に行けないイコール地獄に落ちる

さて、不思議なことに人に衝撃を与えるようなことは続いて起こるものである。クリスチャンが天国に連れて行かれてしまったと勘違いをした時から、それほど時間を経ていないある日曜日のことであった。教会でそれは起こった。

ところで、熱心なまでに信心深いマッスルマン家は欠かすことなく日曜日になると必ずと言っていいほど教会に通っていた。自然、そのようなマッスルマン家に従って私自身も日曜日には教会に通うようになっていた。そのおかげで教会にもだいぶ慣れることができた。礼拝をする以外に教会で何か特別なことをするというわけでもないのだが、信仰を持っていない私でさえも、他のクリスチャンと一緒に賛美歌を歌い、そして聖書の話に耳を傾けるというのは、心が洗われるような気持ちになり、クリスチャンではなくても、信仰を持っていなくとも、なんとなくクリスチャンに一歩近づいた、神様に一歩近づいた、そのような気がするのであった。

その日曜日もいつもの日曜と同じように教会に行ったのである。さて、礼拝が終わり心が少しは清められたかなと思いつつ、教会のホールでマッスルマン家の娘二人とクッキーを食べていた私に、教会の副牧師という人物が話し掛けてきたのであった。そのような立場ならば、おそらく礼拝の後にはいろいろとやらなくてはいけないこともあるだろうし、話さないといけない人たちも他にいるだろうに、それでも私に声を掛けてくれるとはなんと親切なことだろうか、そのように考えながらもその人と少し話したのである。どうやら私がマッスルマン家にホームステイをしていることまでは知っているようだったので、自分の名前と今どの学校に通い何を勉強しているのかなどと話した。そして会話が一段落した時に彼がこう聞いてきたのである。

「あなたはクリスチャンですか?」

「いいえ、クリスチャンではありません。」

「ほぅ。それではあなた、死んだ後にどこに行くか分かりますか?」

私が死んだらどうなるかは聖書を読んでいたのでなんとなくは分かっていた。少なくとも天国に行けないのは確実である。しかし、天国に行けなければ、どこに行くのであるかということはよく分かっていなかった。そのようなわけで、なんと答えていいものかと考えていると、彼が私の代わりに答えてくれたのである。

「あなた、このままでは地獄に落ちてしまいますよ。」

これにはびっくり仰天してしまった。天国に行けないイコール地獄に落ちる、ということに驚いたわけではない。このようなことを初対面の人間に言われたことに、むしろ驚いたのである。だが実際には、驚きよりも悔しさの方が私には大きかった。地獄に落ちたくはなかったが、たとえ罪深さゆえに私が地獄へ落ちたとしても、それはそれで仕方のないことであろうとアタマで理解することはできた。しかし、初対面の人間にそれを言われることは納得ができなかった。

悔しさのあまり、体全体が内も外も燃えるように熱くなってくるのが感じられるほどであった。そして悔しさのゆえに涙が目に浮かんでくるのも感じられた。しかし、男が泣くわけにはいかないと思い、私は涙を必死に抑えるのであった。横に立っていたケルシーが心配そうに私のことを見上げていたので、何でもないよ、と笑って見せたのであるが、悔しさは収まりようがない。

用事を済ませたキムさんとブルースさんが戻ってくると、 顔を真っ赤にして目に涙を浮かべて立っている私を見つけた。

「どうした、かつ?泣いているのか?」ブルースさんが心配げに訊ねた。そして、私は何が起こったのかを二人に説明したのである。これを聞くと、二人もさすがに、なぜそのようなことを口にする者がこの教会にいるのであろうか、けしからん、と言いたげな様子であった。キムさんが言うには、この人物はこれ以外にもいくつか教会内で問題を起こしたということらしい。さて、その後しばらくすると、彼の姿を目にすることもなければ話を耳にすることもなくなった。一方、その日の昼食は五人で私の好きなメキシコ料理を食べに行くことになったのである。

嵐は去った。

(続く)