テオピロへ 9

信徒たちはそれぞれの持ち物を売って得た金を互いに分け合っていた。その中には土地も含まれていたというから、テオピロは驚いた。彼も信仰者ではあったが、実際に自分の所有しているものを売って、その金を弟子たちに寄付したことはなかった。もっとも、自分の稼ぎからいくらかを出したことはあったが、自分の持ち物を売ろうとまで思ったことはなかった。キプロス生まれのヨセフという人物がしたように、自分の不動産を売ってしまうなどとは、自分にはとてもではないが真似などできないと、テオピロは思った。

本当に自分の持ち物を売って、その金を捧げなければならないのだろうかと幾度か考えてみた。もしそうなら、大変なことになるだろうと、想像してみた。それほどの信仰が自分にあるのかと、テオピロは少し不安にも思うのだった。

さて、ルカからの書簡を読み進めていくと、アナニヤとサッピラという夫婦について書かれていた。どうやらこの二人も自分たちの所有していた土地も含めて、持ち物を売り払い、その金を弟子たちのところに持ってきたのだった。夫婦揃ってとは、二人ともよほど信仰が篤いのだろうかと思ってしまいそうだが、実際のところはそうでもなかったようだ。

それというのも、彼らは売り上げの一部だけを弟子たちに捧げたのであったが、実は残りを自分たちの手元に残しておいたのだ。もしかしたら、新しい土地を買って、新しい家でも建てようと考えていたのだろうか。それともいざ実際の金額を見て、(欲に?)目がくらんでしまったのだろうか。そして、全部を弟子たちに渡すのが惜しくなってしまったのだろうか。なんとも本当の理由は分からないし、一体どれだけ自分たちのところに残しておいたのかも分からない。ただ、すべてを捧げなかったのだけは確かなようだ。

しかも、彼らは悪いことに弟子たちに嘘をついたのだった。しかも、夫婦揃ってである。いや、おそらく二人は申し合わせていたのだろう。さて、アナニヤがやってきたときに、ペテロは彼が一部を自分の手元に残しておいたことを知り、彼に言った。「あなたが欺いているのは私たちではない。あなたは神ご自身を欺いているのだ。」

そして、アナニヤはその場で倒れて息絶えてしまった。すると、その後しばらくして、アナニヤの妻のサッピラがやってきた。ペテロは彼女に聞いた。「これがあなたたちが土地を売って得た金額のすべてですか。」

「はい、それが全部です。」

しかし、ペテロは彼女が偽っていることを知っていた。「なぜあなたは夫と一緒になって、神の霊を試そうとするのですか。あなたの夫の身に起こったことが、あなたにも起こるでしょう。」

ペテロが言い終わるや、彼女もその場に倒れて息絶えてしまった。この様子を見ていた人たちや噂を聞いた人たちはすっかり怖くなってしまったという。当然であろう。実際に見ていたわけではないのに、テオピロも背筋が寒くなるのを覚えてしまったほどだ。

恐ろしくもあったが、これはどういうことなのだろうかとテオピロは考えてみた。持っているものをすべて捧げなければいけないのだろうか。それとも何かを売ったら、その金額をすべて捧げないといけないのだろうか。さもないと、この二人のように命を落とすことになるのだろうか。

しかし、テオピロはすべてを捧げたわけでもないのに、まだ生きている自分がいることを不思議に思うのだった。もし一部を自分のために残しておくのが、罪であるのならば、なぜ自分は生きているのだろうかと。

ペテロの言葉にその答えを見出すことができるのではないだろうか。彼はアナニヤとサッピラが神を欺いていると言っているではないか。彼らの罪は、すべてを捧げなかったことではなく、神に偽りを語ったということであった。すべてを捧げたのでもないのに、あたかもすべてを捧げているかのように語ったことが彼らの罪であった。

すべてを捧げるのでなければ、正直にそう言えばよかったのであろう。テオピロは神の前に正直であることが、どれだけ捧げるかよりも大事なのではないかと考えるのだった。