神の計画

時が流れて、ヤコブの十二人の息子たちの時代となった。十二人の息子のうちでも、ヤコブはことさらヨセフを可愛がっていたという。それというのも、ヨセフはヤコブとラケルの間で長いこと待ち望まれて生まれた一人目の子供であったからだ。ラケルがいない今となっては、ヤコブにとっては最愛の人の思い出とも言えよう。思えば、ラバンがヤコブのことを騙してラケルの姉のレアと結婚させるようなことをしなければ、ヨセフがヤコブの息子たちの中で長子となったことであろう。しかし、長子であろうと十一番目の子であろうと、ヤコブにとっては最愛の息子であった。彼は息子のために鮮やかな色合いの上着を誂えさせて、彼に与えたこともあった。父親から大事にされる様子を見て、他の兄弟たちは彼に対して羨みと憎しみを感じるようになったことだろう。

さて、ヨセフであるが、彼はよく夢を見たらしい。そしてその夢の内容というのが、彼の刈り取った麦の束に対して、兄たちの刈り取った麦の束が頭を下げているとか、太陽と月と十一の星が彼の前に跪いているとかいう内容であった。黙っていれば良いものを、夢で見たことを兄たちに話すので、彼らのヨセフに対する憎しみは増すばかりであった。彼らはヨセフが夢のことを話す度にこう言った。「そんなにお前は自分が偉くなるとでも思っているのか?俺たちを支配する王様にでもなるつもりか!」

ヤコブもこれを聞いていて、ヨセフを叱って言った。「おまえの見た夢は、いったい何なのだ。私や、母さんや、兄さんたちが、おまえの前にひれ伏しておまえを拝むとでも言うのか?」

さてある日のこと、ヨセフの兄たちは羊の群れを連れて外に出ていた。父から彼らの様子を見てきて欲しいと頼まれたヨセフは出かけて行った。ところがその時兄たちはヨセフがいないのを良いことに、ヨセフをどうやって始末するかを相談していた。もっとも兄弟すべてがそれを承知したわけではなかったようだ。実際、一番上の兄であるルベンは、ヨセフを殺すことに反対した。年長者としての責任を感じたのかもしれない。もしくは夢のことばかりを話していたとしても、長男である彼にとっては弟でしかなかったのかもしれない。さもなければ、長男である自分の地位に変わりがないことを確信していたのかもしれない。しかし、本当のことは分からない。少なくともヨセフの兄すべてが彼に対して殺したい程の憎しみを持っていたわけではない。ルベンは他の兄弟たちが去ってからヨセフを救い出すつもりで、荒野にあった古井戸か何かの穴に彼を投げ込むようにと言った。

さて、何も知らないヨセフは抵抗する間もなく、兄たちに捕らえられ父から貰った上着を剥ぎ取られると穴に突き落とされてしまった。ルベンは見るに耐えられなく、その場を立ち去ってしまったようだ。

ところで四男のユダも殺すことにためらいを感じていたようだ。ヨセフの命を奪ったところで、血が流されるだけで得るところは何もないと感じたからだ。たまたま近くにいた商人たちのキャラバンに目を留めた彼は、いっそのことヨセフを奴隷として売ってしまおうかと彼らに言った。邪魔なヨセフもいなくなる上に多少の小遣が手に入るのならばよしと考えたのだろう、すぐにヨセフを穴から引っ張り出すと銀貨二十枚と引き替えに彼を売ってしまった。そしてやぎを殺し、ヨセフの上着をその血に浸して、ヤコブのところへ持って帰ることにした。

弟たちが去ったのを見届けたルベンはヨセフを救うため古井戸へ戻ってきた。しかし、弟の姿はどこにも見当たらなかった。とうとう他の弟たちが彼に手を掛けてしまったのかと彼は絶望した。一方、ヤコブは血に染まった息子の上着を見ると、彼が獣に噛み殺されたと思い込みひたすら悲しみに暮れるのだった。しかし、家族の知らないところで、ヨセフは生きており、エジプト王の家来の家に買われて行ったのだった。

人の目から見たら、ヨセフの境遇は何とも哀れなものに思えてしまう。しかし、これも神だけが知っている目的のためなのである。我々には理解できないことがあったとしても、神はすべてを存じておられるのだ。それにしても口は災いの元と言うが、まさしくその通りになってしまった。何が口をついて出るか気をつけたいものである。