ヨセフの出世

人が成功する理由というは、その人の性格というか努力に依存するところもあるだろうし、神がその人の為すことを導いて、祝福しているということにもあるのだろう。それとは関係がないことであるが、神は夢を通して人に語り掛けることもあるようだ。もちろん夢のすべてが神からの伝言というわけではないだろう。おそらく稀なことと言えよう。

ヨセフの話を読むと、そう思わずにはいられない。彼はエジプト王の家臣の妻に誘惑されたが、あくまでも彼の主人と彼に与えられた仕事に忠実であり、情に流されることはなかった。しかし、逆上した彼女の罠に陥り、牢に放り込まれてしまった。しかし彼の持ち前の勤勉さ、誠実さ、逆境にもめげない態度が看守に認められ、監獄の中でも囚人をとりまとめる役目を与えられた。神の助けがそこでもあり、彼のすることはすべてうまくいったのだ。

ある時、王に仕えていた料理人の長と使用人の長が捕らえられ、牢に入れられてしまった。何をしでかしたのかは分からない。王に対する犯罪ということだから、何か宮殿の宝でもくすねようとでもしたのだろうか。いずれにせよ王の逆鱗に触れたのは間違いないだろう。もはやこれまでと観念したことだろう。

さてある晩、二人は夢をみた。その夢の内容が気気掛かりだったらしく、翌朝二人とも青い顔をしていた。それを見かけたヨセフは二人に聞いてみた。

「どうも顔色が良くないようだけど、どうしましたか?」

「昨日の夜、夢を見たけど、どうにもそれが気になってしようがない。その意味を誰かに教えて欲しいのだけれど、誰もいないのです。」

「夢の意味を知るのは神様だけです。その夢について聞かせて下さい。」

まず使用人の長だった男がヨセフに夢で見たことを話した。ヨセフは男の夢が、彼の地位が復権されるということを意味していると教えた。そして、彼が自由の身になった時には、自分のことを王に告げて、監獄から出られるようにして欲しいと使用人の長に頼んだ。さて、それを傍で聞いていた料理長だった男も、ヨセフに夢の意味を教えてくれるようにと頼んだ。しかし、ヨセフが彼に教えたことは、彼は最終的に絞首刑にさせられるということだった。それからしばらくして、二人は王呼ばれて牢を出て行った。

ヨセフが言った通りになった。ところが助かった使用人の長は、ヨセフに頼まれていたことをすっかり忘れていた。助からなかったかもしれない命が救われただけでなく、かつての地位に戻されたのだから、嬉しさのあまりヨセフのことを忘れてしまったのかもしれない。使用人の長を責めるわけにもいかないだろう。ヨセフの運のなさを嘆くしかない。

神が彼と一緒にいたからといって、すべてが願った通りになるわけでもない。どんな祈りでも神は聞かれると言うと、あたかも祈ったことはすべて実現すると期待したくなるのが人情というものであろう。でも実際は、神が祈りを聞くということと、それに応えられるということとは、まるで別なのである。

それから二年経った頃、エジプト王は夢にうなされるようになった。王の悩みを知った使用人の長は、ヨセフのことを思い出し、かつてヨセフが彼の夢の意味を教えてくれたことを王に教えた。王は急ぎ使いをやってヨセフを呼び出した。彼は王の夢の話を聞くと、今後七年間の豊作の時期が続き、その後七年間の飢饉が迫っていることを王に教えた。彼はどのように飢饉の七年間を乗り切ればよいかを王に示した。ヨセフが見事に王の夢を解き明かし、また問題への解決策を示したことに、王と家来は感心した。王は彼に王位を除いた最高の権威を与えた。

もっとも実際に夢を解き明かしたのも、今後どうすればよいかを示したのも、本当はヨセフではなく、神であった。神が必要な知識をヨセフに与えたのだ。

兄たちに疎まれ、奴隷として売られたヨセフはこうして最高の実力者となったのだ。誰でもがヨセフのように成功するというわけではないだろう。しかし神への信仰と人への誠実さを守れば、長い目で見ると、けして悪いようにはならないのだろう。