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サムソンの弱点

遠い昔、サムソンと言う男がいた。彼の母は長いこと子供を授かることが無かったわけだが、ある日彼女のところに神の御使いがやってきて、このように告げたという。「見よ。あなたは不妊の女で、子どもを産まなかったが、あなたはみごもり、男の子を産む。」(士師記13章3節)まるでどこかで聞いたことのあるような話である。確かアブラハムの年老い過ぎた妻サラのところにも神の使いがやってきて、同じようなことを告げたではないか。また新約聖書では、御使いガブリエルが祭司ザカリヤにこう伝えている。「こわがることはない。……あなたの願いが聞かれたのです。あなたの妻エリサベツは男の子を産みます。」(ルカ1章13節)ちなみにザカリヤの妻エリサベツも不妊だったという。また処女マリヤのところへも表れたガブリエルはこう告げている。「ご覧なさい。あなたはみごもって、男の子を産みます。」(同31節)もっとも処女と不妊では違いがあるかもしれないが、いずれにせよ奇跡に等しいことであることに違いはないだろう。

ところで神の御使いはやがてサムソンの母となる女性にこう伝えた。「その子の頭にかみそりを当ててはならない。その子は胎内にいるときから神へのナジル人であるからだ。彼はイスラエルをペリシテ人の手から救い始める。」(士師記13章5節)ちなみにナジル人とは聞き慣れない言葉であるが、詳細については民数記6章に書かれている。簡単に言ってしまうと、神の目的のために特別に選ばれた者という意味がある。やがて神の御使いが言ったとおりに、サムソンが生まれた。彼が成長するにつれて、神は彼を祝福した。
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エフタの従順

遠い昔、エフタと言う男がいた。エフタには兄弟がいたのだが、どちらかと言えば兄弟仲は良い方ではなかった……と言うと、控え目な言い方になってしまいそうである。聖書を読む限りでは、兄弟仲が悪かったのは明らかである。それというのも、彼が異母兄弟であったからだ。異母兄弟と言っても、さらに彼の立場を悪くしたのは、彼の母親が遊女であったことだろう。エフタは兄弟たちに疎まれて、挙げ句に家から追い出されてしまった。

ところでエフタは追い出されてからと言って、それを嘆いて日々を送るというような性格の人物ではなかったようだ。「ギルアデ人エフタは勇士であった」(士師記11章1節)とも書かれているように、芯の太い者であったろう。もしかしたらそれも彼が兄弟たちからつまはじきにされたことの遠因だったのかもしれない。遊女の子のくせに生意気だ、くらいのことを言われて育ってきたのかもしれない。
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アビメレクの悪

遠い昔、アビメレクと言う男がいた。彼はギデオンの息子のひとりであったが、ひとり息子というわけではなかった。なんと彼には70人近くの兄弟がいたそうだ。ところで彼の母はシェケム出身の女奴隷であったというから、これは私の想像でしかないが、おそらく他の兄弟たちからはさげすまれていたのかもしれない。もしかしたら彼はどこか僻みっぽいところがあり、いつか兄弟たちを見返してやろうと考えていたのかもしれない。そして父ギデオンが亡くなった時、彼は行動を起こしたのだ。彼は母の故郷の人々にこう問いかけた。「エルバアル(ギデオン)の息子七十人がみなで、あなたがたを治めるのと、ただひとりがあなたがたを治めるのと、あなたがたにとって、どちらがよいか。私があなたがたの骨肉であることを思い起こしてください。」(士師記9章2節)

当然、人々の気持ちとしては知らない人々の支配を受けるよりも、自分たちの身近な人物に治められることを望むであろう。こうして彼は今で言うところの世論操作を行い、大胆にも自ら王になろうとしたのだ。そして人々の思いが自分に傾いてきたことを知った彼は、自らの立場を守るべく兄弟全員を殺してしまったのだ。幸い、ギデオンの末の息子ヨタムだけは難を逃れたという。
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ギデオンの求めたしるし

遠い昔、ギデオンと言う男がいた。彼の時代、イスラエルの人々は再び神に対して背を向けるようになって いた。実際、ギデオンの父ヨアシュも異教の神バアルのための祭壇を持っていたと書かれている。おそらくイスラエル人が神の前に行った悪というのは、彼らをエジプトの地から連れ出した唯一絶対の神ではなく、連れ出した先の土地において神として崇められていた偶像を礼拝したことであろう。何と言っても、イスラエル人には荒野における前科があるではないか。彼らにとって不幸なことは、年月を経たことで、人々の記憶から昔のことが忘れられつつあったことかもしれない。

その背きのために、イスラエル人は他民族によって今一度迫害されることになったのだ。神はミデヤン人を 送り、イスラエル人を懲らしめ、罪に気付かせようとした。ミデヤン人はイスラエル人を襲っては、彼らの農作物を奪い取ったという。それというのも「彼らは国を荒らすためにはいって来た」(士師記6章5節)からだ。エジプト人はイスラエルの民を迫害し奴隷としたが、ミデヤン人は彼らの土地を荒らすためにやってきたという。自由を奪われる方を選ぶか、生活の糧を奪われる方を選ぶか……個人的にはどちらも遠慮願いたいところである。とにかくイスラエルの民はミデヤン人から身を避けるために、山の洞窟に隠れて住んでいたというから、あまり自由でもなかったようである。
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